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総務省統計局の人口推計(2023年1月報)によりますと、今年1月1日現在の総人口(概算値)は、前年同月と比べて53万人減少となる1億2477万人です。内訳をみると、15歳未満1445万人、15歳以上65歳未満7411万人、65歳以上3621万人となっています。
日本各地で、働き手が足りないと叫ばれるようになって久しいのですが、原因は人口減少と少子高齢化であることはいうまでもありません。この10年間で生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は約1割減りました。年々深刻さを増しているにもかかわらず、現場が何とか回ってきたのは、女性の社会進出、高齢者の定年延長、外国人技能実習生の活用などにより、綱渡りながら、やりくりできていたからです。
しなしながら、それも限界が近づいています。コロナ禍による経済停滞によって人手不足の声はいったんは小さくなりましたが、正常化がすすむと、再び声は大きくなりだしました。帝国データバンクの昨年10月の調査では、正社員の人手不足を感じている企業は全体の5割に達し、非正社員でも3割を超えています。特に旅館・ホテル、飲食店などの分野で現場崩壊が目前に迫っている状況です。中小事業者などの一部では、人手が足りず、目の前の仕事を諦めざるを得ません。客室の稼働率を制限するホテルなども散見されています。
人手不足でも縮小均衡や撤退を選ばず、拡大する需要を取り込む方策はないのか。投資家の視点でみれば、この解をみつけた企業が成長銘柄としての資格をもつのでしょう。働き手が特に不足している産業は賃金が安いうえ、身体的にきつい仕事という傾向があります。賃上げと平行して、身体負荷軽減や省人化につながる技術の導入推進が不可欠です。
昨秋、秋田県のあるダム建設現場では、降雪による閉所期間を控え、土砂をならすブルドーザーや踏み固める振動ローラーが24時間体制で作業をすすめていました。ただ、操縦席に人影は見当たりません。施工を請け負うのは鹿島で、自社開発したシステムによって重機が自身の判断で動いています。人の主な作業は遠くから見守ることで、10台を4人のオペレーターで監視可能です。
鹿島のようにイノベーションで難局を打開しようとする動きは外食産業でも広がっています。コロワイド傘下の飲食店の一部では店員の代わりに配膳ロボットが料理や飲み物を客席に届けており、従業員ひとりが月90時間でこなす仕事量をロボット1台で代替できるとか。この配膳ロボットを提供するソフトバンクグループ傘下のソフトバンクロボティクスによると、昨秋から需要が一気に増えたそうです。
イノベーションを自ら起こすことができない企業や個人事業者でも、IT機器や外部サービスを活用することで人手不足を克服する道が開けてきました。セルフレジ、IoT端末、経理や人事のクラウドサービス、人工知能といった解決策を新ビジネスとして提供できる企業も、有力な成長銘柄候補といえるでしょう。
人手不足はもはや日本の慢性疾患となってしまいました。病状の改善が見込めないなら、本腰を据えてビジネスの仕組みを転換していくしかありません。企業にとって人手不足は持続的な成長のために乗り越えるべき大きな課題ではあるものの、同時にビジネスの構造変化を促す革新の源にもなり得ます。弊社でも革新の源にできるよう、対応をすすめて参ります。