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2カ月ほど前になりますが、カナダのメディア・投資調査会社コーポレート・ナイツは、「世界で最も持続可能な企業100社(グローバル100インデックス)」を公表しました。これは売上高10億ドル以上の上場企業6000社以上を対象に、環境・社会・企業統治(ESG)などの観点から持続可能性を評価し、上位100社を選出するものです。毎年のダボス会議に合わせ、1月に公表されています。今回は上場企業6733社を対象として持続可能な収益率と投資率、炭素生産性、人種やジェンダーの多様性など計25指標でのパフォーマンスを評価し、ランキングしました。1位はオーストラリアのシムズ(金属スクラップのリサイクル)、2位もオーストラリアのブランブルス(再利用可能なパレットとコンテナを提供するサプライチェーン・ロジスティックス)、3位はデンマークのベスタス・ウィンド・システムズ(風力発電設備)となっています。シムズとブランブルスは廃棄物をリサイクルし、新しい製品・サービスをつくり出す循環型経済に関連する企業という点が高評価につながったのでしょう。100位までの企業が持続可能なプロジェクトに投資する割合は55%で、前回の47%から上昇しました。コーポレート・ナイツの調査マネージャーであるマシュー・マリンスキー氏は、「こうした企業が持続可能な資本的支出や研究開発への投資を増やしていることは、近い将来、持続可能な収益の更なる増加が期待できるということだ。」述べています。日本企業ではエーザイ(35位)、リコー(72位)、シスメックス(100位)の3社がランクインしました。
さて、次はそうした企業に投資している機関投資家のお話になります。投資先企業にESG要因を考慮した対応を働きかけるエンゲージメント(対話)を機関投資家がどの程度実行しているのか、QUICK ESG研究所が調査結果を公表しました。「ESG投資実態調査2023」では、「すべての対象企業と実行できた」と回答したのは3割弱にとどまり、エンゲージメントに関する課題が浮き彫りになっています。
調査は昨年8月21日~10月10日に実施され、国内265の機関投資家に依頼し、73機関から回答を得ました。責任ある機関投資家の諸原則である日本版スチュワードシップ・コードを受け入れている、あるいは、国連の責任投資原則(PRI)に署名している投資家が対象で、アセットマネジャー(資産運用会社)46社、保険会社や年金、大学などのアセットオーナー(資産保有者)27機関が回答しています。環境、社会、企業統治の課題ごとにエンゲージメント実施社数を「1社以上5社未満」から「200社以上」までの7つに分け、「実施していない」を加えた8つの選択肢から選ぶ設問を設けました。また、「すべての対象企業と実行できたか」などの設問も加えています。
エンゲージメントで重視するテーマは首位が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を含む「気候変動」(91%)、2位は「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)」(72%)、3位は「人権」(61%)で、この上位3つは2021年から変わっていません。4位は「労働慣行(健康と安全)」(41%)で前年の31%から上昇し、「生物多様性」と順位が交代しました。エンゲージメントによって企業に改善がみられないときは、「全株売却を検討する」が11%、「エクスポージャー(投資残高)を減らすことを検討する」が29%で、「売り」の割合は前年と大差はありませんでした。「議決権行使で反対票を投じる」といった踏み込んだ措置により、企業に圧力をかけながら対応を促す戦略の機関投資家も散見されます。株主としての権利を積極的に用いるエンゲージメントや議決権行使の重要性は今後も続いていくでしょう。弊社も投資される側の上場企業として、対応をすすめて参ります。