2023.05.15社員ブログ

サプライチェーン全体で・・・・

本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。

今年3月、気候変動について、科学的知見に基づき、現状の評価や対策をまとめた第6次統合報告書の政策決定者向け要約が、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から公表されました。一昨年と昨年に公表された3つの作業部会(自然科学的根拠、影響・適応・脆弱性、緩和)の報告書をもとにしたもので、9年ぶりの統合報告書となります。世界の平均気温は産業革命以前に比べ、2011~2020年に1.1℃上昇しており、このままでは近いうちに1.5℃に達する可能性が高いと警鐘を鳴らしました。温暖化を1.5℃に抑えるためには、2019年レベルと比べ、二酸化炭素を2030年に48%、2050年に99%削減しなければなりません。現在の各国の削減目標や削減実績では足りないことが強調され、この10年が勝負であると繰り返し述べています。

自動車産業で温暖化ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルをサプライチェーン全体で目指す動きが活発です。ただ、産業の裾野が広いだけに、単に車の電動化だけでは不十分といえます。原材料の製造から廃棄・リサイクルまで製品サイクル全体の環境負荷を評価するライフサイクルアセスメントが重要です。

昨年末、日産自動車は、車そのものの生産からサプライチェーン全体での脱炭素の取り組みが不可欠であると記者会見で訴え、神戸製鋼所がつくる二酸化炭素排出量実質ゼロのグリーン鋼材を新型ミニバンのセレナで採用すると発表しました。国内の自動車大手で量産車にグリーン鋼材を採用するのは初めてです。

一般的に鋼材を製造する際、原料の鉄鉱石から酸素を取り除く工程で石炭由来のコークスを使うため、大量の二酸化炭素が発生します。神戸製鋼所の場合、天然ガスで鉄鉱石から酸素を取り除いてつくった直接還元鉄を原料の一部に使うことで、コークスの使用量を減らし、二酸化炭素排出量を2割削減することが可能です。全体の製造時の二酸化炭素削減効果を特定の鋼材に割り当て、第三者機関から排出実質ゼロの製品として認定を受けています。

自動車メーカーが脱炭素素材の採用に踏み切る背景には、企業が投資家や消費者などからサプライチェーン全体で脱炭素に取り組むことを求められるようになってきたからにほかなりません。日産自動車は製品のライフサイクル全体を通じて温暖化ガスの排出量を開示しています。一昨年度の排出量は自社の製造工程などに関するもので約70万トン、外部から調達する電力などエネルギー消費に由来するもので約154万トンになりました。更に、これらには含まれない、素材調達から製品の輸送、販売、廃棄などを対象としたのもでは約1億2774万トンにのぼります。

国内自動車メーカーの間でサプライチェーン全体での脱炭素を目指す動きが広がるなか、海外でも同様の取り組みがすすんでおり、ドイツのフォルクスワーゲンは2025年にライフサイクル全体を通した二酸化炭素排出量を2015年比で3割減らす目標を掲げました。同じくドイツのBMWは2030年までにライフサイクル全体で3割超の削減を目指しているところです。

2050年のカーボンニュートラル実現は全ての国内企業にとっての課題ではあるものの、こうした潮流は技術開発など新たなビジネスの芽も生み出しています。足元の取り組みが近い将来に花開き、国内産業をけん引する原動力になっているかもしれません。弊社でも不動産会社として何ができるのかを考え、実行して参ります。

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