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日永(ひなが)の頃となりました。日永とは、春になって昼間が長く感じられる、といった意味の季語になります。実際には、夏のほうが春よりも日が長いのですが、風情や趣きのある俳句の世界では、昼が短く寒い冬を過ごしてきたからこそ、とりわけ春の日の長さを実感するという感情が込められているようです。夏目漱石の句に、「鞭(むちう)って 牛動かざる 日永かな」がありますが、日永には、のどかで、のんびりと、ほっとした春の気分も含まれているのかもしれません。
こちらはそのような春の気分を打ち壊してしまうものになりますが、ちょうど9年前(2016年4月14日)、熊本県熊本地方でマグニチュード6.5の地震が発生し、益城町では震度7を観測しました。翌々日の16日にもマグニチュード7.3の地震が発生し、益城町と西原村で震度7が観測されています。激しい揺れが短期間に連続して起きたことに加え、熊本地方から阿蘇地方、大分県中部地方にかけての活発な地震活動により、益城町と西原村を中心として、熊本県から大分県にかけて甚大な被害となってしまいました。同一地域で震度7の揺れが2回観測されたのは、気象庁の震度階級に震度7が追加された1949年以降で最初のことであり、この2回を含めて、震度6弱以上の地震が通算して7回発生しています。また、14日の最初の地震以降、約半年の間に震度1以上の地震が4000回以上発生しました。
さて、次は災害時にも関連するお話ですが、危険に直面しているのに、それを過小に捉えてしまう心理のことを認知バイアスと呼びます。そのなかでも、過去に起きたことだから今回も大丈夫だろうと、経験的判断でリスクを過小評価してしまうのがベテラン・バイアスです。大きな災害に遭遇して何事もなく無事だった経験が、かえって逆に、次の災害の際、危険の過小評価につながることもあります。
2011年3月11日、平日の午後に発生した東日本大震災の際には、直接の被災地ではなかったものの、東京都内では電車が止まり、ターミナル駅は多くの帰宅困難者であふれかえりました。東京都内だけでも帰宅困難者は352万人にのぼったそうです。電車が動かないので、遠い道のりを歩いて帰宅した人も少なくありませんでした。
東京都全域は震度5弱以上の揺れとなりましたが、都内では建物の倒壊などといった揺れによる直接的な被害はごく僅かでした。また、人があふれて多少の混乱はあったものの、例えば、雑踏のなかで人が倒れ込み圧死するような大混乱生じていません。しかし、本当の首都直下地震の発生時は、最大800万人、都内だけでも500万人ほどの帰宅困難者が予測されています。大きな地震がきても、東日本大震災のときのように自分は安全に帰れるだろうと、安易に考えている人もいるでしょう。その考え方にはベテラン・バイアスがかかっています。東京大学のある教授は、東日本大震災のイメージで帰宅困難者の問題を語るには大きな問題があると指摘し、単に帰宅するのが難しいだけではなく、人が折り重なって倒れる群集雪崩という命の危険があることに警鐘を鳴らしています。
日本は世界で発生するマグニチュード6.0以上の地震の約2割が集中する世界有数の地震国です。地震被害は、日本国中、どこであっても発生する可能性があるでしょう。各人が地震の危険性について認識し、防災意識を高めていく必要があります。全国で多数の不動産を所有・管理する弊社も同様であることはいうまでもありません。