本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。
早いもので、1年の前半6ヵ月間が終わり、7月に入りました。7月1日は様々な記念日となっていますが(例えば「銀行の日」、「弁理士の日」、「建築士の日」など)、安全に関するものもふたつあり、ひとつは「国民安全の日」です。これは、日本国民のひとりひとりが施設や行動面での安全確保に留意し、交通安全、火災などの災害発生の防止を図る国民運動を啓発するための記念日となります。1960年、産業災害や交通事故の増加を受けて制定されました。毎年、災害発生の防止に功績のあった人を対象に安全功労者内閣総理大臣表彰がおこなわれるほか、各種の啓発行事が実施されています。
もうひとつが「航空自衛隊安全の日」です。1999年8月から2000年7月までの間に、航空自衛隊の航空機の墜落事故(計5件、13名殉職)が連続発生したことを契機に、毎年7月1日に飛行訓練を停止し、安全教育を実施するために制定されました。航空自衛隊全隊員に対し、航空幕僚長の訓示がおこなわれるほか、各基地・部隊ごとに式典が実施されています。安全運航が大前提の航空機(戦闘機)ですが、航空優勢(武力攻撃が発生した場合に、味方の戦闘機が大規模な妨害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態)を確保するためにも、日本主導で次期戦闘機を開発していくことは喫緊の課題です。現在、日本は英国、イタリアとともに、3ヵ国の技術を結集し、コストやリスクを分担しながら、将来の航空優勢を担保する優れた戦闘機開発をすすめています。
さて、その航空機や船舶、将来は自動車での利用において注目されているのが、脱炭素へ向けての運輸燃料となる、水素と二酸化炭素を合成して造る新燃料です。資源のない日本はかつての石油危機以降、何度も合成燃料に挑戦し、頓挫してきました。
あらためて合成燃料が注目を集めるきっかけは、昨年3月、電気自動車の先導役だった欧州連合が2035年以降のエンジン車販売禁止を撤回し、温暖化ガス排出をゼロとみなす新燃料なら容認する方針に転換したことでした。大気中に放出されるはずだった二酸化炭素を回収し、再生可能エネルギーで水を電気分解した水素とかけ合わせれば、カーボンニュートラルが可能です。日本も一昨年に官民協議会を立ち上げ、2030年代前半の商用化を目標としています。製造方法は2通りあり、触媒反応で中間原料として合成原油をつくる方法と、合成メタノールをつくる方法です。それらを精製や組成転換し、合成燃料へと造り替えていきます。国内大手石油会社の戦略も、この二手に分かれています。
1970年代の石油危機以降、官民を突き動かしてきたのは、石油の枯渇が近いとするピークオイル論でした。しかし現在、水素と二酸化炭素で合成燃料を造るのは、どちらかというと、石油がなくなるという理由ではありません。脱炭素化で、物理的には石油が存在していても、使えなくなってしまうからです。合成燃料の普及はまず航空機や船舶向けからとみられています。航空機や船舶では液体燃料以外の選択肢がなく、また、世界で利用義務づけの動きも加速しているところです。電化が望める自動車向けは需要が読みにくかったのですが、潮目は変わりつつあります。コストや航続距離、寒冷地走行の難しさ、そして中国製の車両・電池に市場を席巻されることへの警戒感がない交ぜになった足元のEV市場の失速をみれば、合成燃料の用意を怠るわけにはいかないでしょう。弊社の事業に直接関係するものではありませんが、動向には注意を払って参ります。