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昨年10月、世界自然保護基金(WWF)は南米コロンビアのカリで開催された国連の生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)に合わせ、『生きている地球レポート2024』を公表しました。半世紀前に比べて生物多様性の健全性を示す「生きている地球指数(LPI)」が73%減少しています。LPIは動物の失われた個体数や個体群の数ではなく、個体群の大きさについて、50年間の平均的な変化を示したものです。今回、哺乳類や鳥類、魚類などの約5500種で3万5000程度の個体群を調査・分析しています。
生息環境でみると、淡水域でLPIが85%減少と著しく、陸地で69%、海洋で56%減少しました。地域別では、LPIの減少率が最も高いのは中南米・カリブ海(95%)です。次いで米国(76%)、アジア・太平洋地域(60%)となりました。各地域で自然と生物多様性を脅かす最大の要因は、食料システム(食料を生産・加工し、消費者に届けるためのネットワーク)による野生生物の生息地の劣化と喪失で、以下、乱獲、侵略的外来種、病気と続きます。ほかにも気候変動が中南米・カリブ海で、環境汚染が北米、アジア・太平洋地域で脅威になりました。
地球はいま、人類と生物種の未来が危ぶまれ、地球の生命を支えるシステムが機能不全に陥る転換点に直面していると、このレポートは警告しています。また、転換点を避けるには、自然環境保全、食料・エネルギー・金融システムにおける変革をすすめ、3つの国際枠組み(昆明・モントリオール生物多様性枠組、パリ協定、持続可能な開発目標)が掲げる2030年目標達成に向けた、今後5年間の取り組みが重要な鍵になるとも、レポートには述べられています。
生物多様性の観点からみると、現代は「第6の大量絶滅時代」です。この大絶滅は過去5回発生した大絶滅よりも種の絶滅速度は速く、その主な原因は人間活動による影響と考えられています。2019年、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)から公表された、「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」によると、世界の陸地の75%は著しく改変され、海洋の66%は複数の人為的な影響下にあり、1700年以降は湿地の85%以上が消失するなど、人類史上かつてない速度で地球全体の自然が変化しているところです。
また、水、大気など環境中の様々な媒体にまたがって存在する窒素、マイクロプラスチックを含むプラスチックごみ、人為的な水銀排出や難分解性・高蓄積性・毒性・長距離移動性を有する有害化学物質によるグローバルな汚染が深刻化しており、水、大気、食物連鎖などを通じた健康や生態系への影響が懸念されています。
こうした環境の危機に的確に対応するため、昨年5月、政府は第六次環境基本計画を閣議決定しました。環境基本計画は1994年から策定され、環境基本法に基づき、政府全体の環境保全施策を総合的かつ計画的に推進するものです。今回の計画でも、環境・経済・社会の統合的向上など環境政策が全体として目指すべき大きなビジョンが示されました。弊社でできることは限られていますが、環境基本計画が目指す、持続可能な社会の実現に少しでも関与していければと思っています。