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今月初旬、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF=Government Pension Investment Fund)から、2023年度第1四半期(4~6月)の年金積立金の運用状況が公表されました。期間収益率9.49%、期間収益額18兆9834億円(うち利子・配当収入1兆3591億円)、期末運用資産額219兆1736億円となっています。GPIFは厚生労働大臣から寄託された年金積立金の管理及び運用をおこなうとともに、その収益を年金特別会計に納付することによって、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的としています。そのGPIFが運用改革に取り組みはじめました。
「クジラが動いた。」
日本の株式市場ではGPIFが日本株を買っているとのうわさが流れると、こう例えられます。2014年に国債に偏っていた運用を見直し、株式への配分を引き上げたことで、市場での存在感は急速に高まりました。巨額資金を運用する投資家が動けば、市場へのインパクトは無視できません。現在では毎週、基本ポートフォリオからのずれを点検し、必要があれば市場へのインパクトに注視して調整しています。こうした運用手法の変更がどの程度の収益改善につながっているのかを数値で示すのは難しいものの、運用への意識は大幅に高まっています。
海外の大手年金に比べ、運用のプロが少ないのもGPIFの課題です。海外年金では自前運用の部分も多いのですが、GPIFは自ら株式の個別銘柄を選定できないという制約もあり、運用部門の人数などで見劣りします。現在、運用上の様々な制約があるなか、できる限りの対応をしていこうと、給与体系の変更やデータの活用により、運用部門の拡大を検討中です。
また、発信力も課題のひとつになります。数年前まではESG投資におけるオピニオンリーダーとしてグローバルでも注目を集めていましたが、米国を中心にESG投資に逆風が吹いているということもあり、発信力の低下は否めません。動画で「10分でわかるGPIF」を配信するなど、わかりやすさを重視した情報発信を強化しています。海外に比べて日本では年金基金による運用への国民の関心が低いとされており、GPIFからのより積極的な情報発信にも期待したいところです。
さて、世界の年金基金は不動産や未上場株式なといったオルタナティブ(代替)投資を増やしています。米国の公的年金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)はベンチャー企業への投資拡大を計画し、韓国の公的年金である国民年金(NPS)も代替投資の拡大を検討中です。相対的なリターンの高さや分散投資効果への期待が背景にあります。昨年来、世界的な利上げを受けて低金利環境の解消がすすんでも、年金による未上場資産への投資は続いています。投資家が分散投資の重要性を再認識したことも一因でしょう。i-Bondをはじめとする弊社の不動産小口化商品も、規模を拡大していくことで、将来、年金基金で活用されることになるかもしれません。