本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。
暦のうえでは本日から春になりますが、まだまだ寒い日は続きます。本格的な春の訪れにはしばらく時間がかかりますが、皆様も風邪など召されませぬよう、どうぞご自愛下さい。
2023年3月期以後の事業年度から、有価証券報告書でサステナビリティ情報の記載欄が新設されました。環境や社会課題への対応などに関する開示が義務づけられ、気候変動関連について開示する企業も増加しています。金融庁が昨年11月に公表した「特定の単語に関する開示状況」の分析によると、昨年3月期の有価証券報告書を7月1日までに公表した企業のうち、記載欄に「気候変動」の単語を含む開示をした企業は1607社(前期比110社増)、「TCFD」は944社(同63社増)です。
TCFDとは気候関連財務情報開示タスクフォースのことを指します。企業統治指針「コーポレートガバナンス・コード」が2021年6月に改訂され、プライム市場の上場企業はTCFD提言か、同等の枠組みに基づく開示が求められるようになりました。このため、有価証券報告書でもTCFD提言に準拠して開示する企業が目立っています。
TCFD提言は2017年6月に公表された枠組みで、2021年10月に付属書が改訂され、「指標、目標、移行計画に関するガイダンス」が追加されました。この改訂で、推奨開示とされている、「異なる気候関連シナリオを考慮したレジリエンス(復元力)」に関して、「潜在的な財務的影響の明確な開示」が加わっています。地球の平均気温上昇を産業革命以前から2℃以下に抑えることを含む様々なシナリオを想定し、企業に及ぼす影響を試算して、開示することが推奨されています。
環境関連の情報開示フレームワークを提供し、企業の環境対策を評価する非政府組織(NGO)である英国のCDPが2023年におこなった調査では、日本企業は気候変動分野で最高評価のAを112社が獲得しました。質問書はTCFD提言の内容を包含しており、例えば、「財務または戦略面で重大な影響を及ぼす可能性があると特定されたリスクとその対応」に関する設問では、財務上の潜在的影響額やリスク対応費用について回答した企業も少なくありません。
こうした状況を踏まえ、国内のある調査機関が、気候関連のリスクと機会に関する潜在的な財務影響額の開示が有価証券報告書ですすんでいるかどうかを調べました。調査対象として、昨年10月末日時点のTOPIX100構成企業を選んでいます。リスクと機会の一部の項目に限って金額を開示した企業も含め、財務上の潜在的影響と、その影響額を掲載した企業は26社でした。また、項目ごとに大中小といった影響度を示し、大は100億円以上、中は10億円以上100億円未満、小は10億円未満などと金額レンジを開示した企業も加えると35社になります。影響度だけで金額レンジなしが11社、影響度も影響額も記載がなかったのは54社です。
法定開示文書である有価証券報告書での記載にはまだ慎重な企業が多いものの、サステナビリティ情報開示義務づけ前に比べれば、気候関連の内容は充実してきました。今後も開示がすすんでいくと考えられ、弊社でも不備のないよう、対応をすすめて参ります。