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今年も残すところ2週間あまりとなり、間もなく冬至(21日)です。北半球では1年で最も日中が短くなりますが、歴史を遡りますと、ちょうど217年前、天気が悪いわけでもないのに、その周辺地域では昼間に一面が暗くなったといわれています。
江戸時代中期の宝永噴火は、宝永4年11月23日(1707年12月16日)の正午前ごろにはじまりました。富士山の南東斜面に開いた火口から立ち上った噴煙は成層圏に達し、火口東側の上空は噴煙に覆われています。噴火は16日間にわたって断続的に続き、火山灰は西風にのって江戸や房総半島周辺にまで降り積もりました。富士山の周辺地域では噴石や火山灰が降り注ぎ、地震や噴出物の重みで家屋の倒壊などが多数発生したものの、火砕流や溶岩流が村里に押し寄せることはなく、また、冬季で登山者がいなかったことから、多くの死者や怪我人が出たとする記録は見当たりません。しかし、周辺の田畑は多いところで数メートルも埋没し、長期間にわたって耕作ができなくなりました。火山灰は東側に位置する酒匂川(さかわがわ)などの河床にも堆積し、更には、大雨時に山々からも大量の火山灰が流れ込んで幾度も浸水被害を引き起こすなど、その影響は長期に及んでいます。この噴火では遠く離れた地域においても、火山灰による住民の生活や健康への影響が生じました。例えば江戸では、降り注いだ火山灰が乾いた風に舞い、のどを患う人々が増えたことで、風邪が流行したという記録が残っています。
富士山ではこれまで、宝永噴火以外にも様々な規模、様式の噴火が発生しました。例えば平安時代に発生した貞観噴火では溶岩流が本栖湖まで達したとされています。今後、富士山で、いつ、どのような噴火が起こるのかは分かりませんが、こうした過去の噴火履歴や当時の経験を生かして、ハザードマップの作成、避難計画の策定など、将来の噴火に備えた対策がすすめられているところです。
一方で、火山は人々に豊かな恵みをもたらしています。火山活動によってつくられた雄大 な山体の姿、火口にできたカルデラ湖、高低差によって生まれた滝などの魅力ある風景は訪れる人々に楽しみと憩いをもたらし、また、火山の熱によって生まれる温泉は日本の観光資源のひとつといえるでしょう。溶岩流や山体崩壊によりできた広大な平野、降り積もった火山灰は水はけもよく、長い年月を経て、農業に適した土壌となります。火山活動によってつくられた地層は多くの隙間を有し、内部に多くの水を蓄え、湧水や地下水は生活用水のみならず、農業や牧畜、工業などにも利用され、人々の暮らしを支えていることはいうまでもありません。
さて、次のお話は、その人々の暮らしを支えている水についてですが、世界保健機関によると、温暖化や人口増を背景に、2050年には世界で約50億人が水不足の状態に陥ってしまいます。有限な資源である水の枯渇を招く要因として新たに指摘されはじめているのが、データセンターや半導体製造工場での消費です。データセンターでは、稼働するサーバーを冷やすために大量の水を必要とします。チャットGPTで10~50回の質問のやり取りをするごとに、ペットボトル1本(500ミリリットル)の水が消費されるとか。半導体製造では、基板上に電子回路を形成する工程で付着した化学物質などを洗い流す洗浄工程において、不純物を極限まで取り除いた超純水を大量に使用します。半導体の受託生産で世界シェア6割を握る台湾積体電路製造(TSMC)の主要3拠点では、1日あたりに消費される水の量は25万トン(10分間のシャワー2500万回分)です。
状況が深刻化するなか、水を巡る争いは国同士の紛争にとどまらず、企業と住民間にも広がっています。水が枯渇する米国の一部では、テック企業のデータセンターを巡り、周辺地域で訴訟が起きました。水は地域の共有資源であるにもかかわらず、企業が大量に消費してしまうと、住民の不満が高まります。サステナビリティ(持続可能性)への意識が低いとみなされれば、その企業は投資を受けづらくなるでしょう。業種を問わず、あらゆる企業が水不足と対峙しなければならない時代に入っています。
水同様、人々の暮らしを支えているものが、弊社でも取り扱っている不動産です。サステナビリティへの意識をより高め、所有・管理する不動産の周辺地域への影響にも配慮しながら、企業価値の向上に努めて参ります。