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間もなく立冬(今年は7日)です。暦のうえでは冬になりますが、この3連休、百貨店に冬物を買うために出かけられた方もいらっしゃるでしょう。弊社の近くには伊勢丹新宿本店があります。連休中は賑わっていたに違いありません。三越伊勢丹ホールディングスの開示資料によりますと、伊勢丹新宿本店の昨年度の売上高は3758億円となり、過去最高額を更新しました。なお、本日11月5日というのは、1886年、中山道沿いの東京府神田区旅籠町(現在の東京都千代田区外神田)で、現在の伊勢丹となる伊勢屋丹治呉服店が開業した日になります。
昨年5月8日、新型コロナウイルス感染症における法律上の位置づけが、新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)から5類感染症になりました。これを受けて外出傾向も拡大し、来街者増、免税売上げの伸長などが百貨店の売上げ増加に寄与しています。日本百貨店協会によりますと、昨年の年間売上高は前年比9.2%増の5兆4211億円、2019年比では3.0%減と、ほぼコロナ禍前の水準まで回復しました。そのうちインバウンドは204.8%増の3484億円で、2008年の調査開始以来、過去最高額を更新しています。また、東京23区に限ると、昨年の年間売上高は前年比10.8%増の1兆6070億円、2019年比では0.8%増となり、コロナ禍前の業績を上回りました。
小売業の歴史を顧みると、時代や社会の変化に応じ、様々な業態が生み出されて消費者に受け入れられ、更なる時代の変化を捉えた新たに生まれた業態がそれを更に超えていくということの繰り返しです。小売業の目まぐるしい変化のなかで、百貨店という業態は現在に至るまで生き延びています。小売業の業態で最も古いもののひとつが百貨店です。戦後の高度経済成長とともに、チェーンストアやスーパーマーケットが市場を席巻し、1970年代以降、コンビニエンスストアが国内のどこでもみられる状況が生まれ、1990年代から2000年代にかけてインターネットによる小売りが消費者に広がるなかでも、百貨店という業態は生き残ってきました。贅沢な買い物がワンストップでできる場、文化・教養・レジャーといった購買にとどまらない様々な体験が可能な場、地域の賑わいの中心としての場など、戦後の高度経済成長からバブル景気にかけて百貨店は様々な場としての機能を社会に提供しています。また、地域経済における存在感や、文化発信の担い手としての機能を通じ、地域社会に対する貢献をも果たしてきました。
しかし、バブル景気をピークとして百貨店の売上げは低落傾向が続き、地域においても閉店が相次いで、いまや百貨店が存在しない県も複数に及ぶ状況となっています。もちろん、都市部においては外国人観光客の取り込みによって相応の売上げを上げる店舗も一部にはありましたが、そうした店舗も、コロナ禍で頼みのインバウンド需要を失いました。
小売業全般を俯瞰してみれば、消費者の嗜好の変化への対応、サプライチェーンの効率化への取り組み、更にはデジタル投資など、時代の変化に応じた様々な改革がすすめられてきましたが、百貨店はサプライチェーンの横断的な取り組みはもとより、個社ベースでも、他の小売業態にみられるような改革がすすんできたとはいえません。コロナ禍が終わって状況は改善したものの、またいつか、様々な事情で消費者の大きな行動変化がもたらされる場面がやってくるでしょう。日本が育んできた百貨店という業態が将来に向けて持続可能なものへと脱皮するべく、不断の改革に取り組んでいくことが期待されています。
さて、コロナ禍のことになりますが、ある百貨店様から、不動産関係のお仕事でご一緒したいとのことで、弊社にお声がかかりました。その際にはお取り引きには至りませんでしたが、今後またそういった場面があれば、協業なども検討していければと思っています。