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入学・入社、異動などで、明日から通勤・通学の交通手段が変わる方もいらっしゃることでしょう。JR各社を利用されているかもしれませんが、ちょうど38年前(1987年3月31日)、分割民営化に伴い、日本国有鉄道(国鉄)が解散しています。当時の国鉄は累積債務が37兆円を超え、長期債務の支払い利子だけで年1兆円を超えるなど、営業外費用が営業利益を上回って増大する状況が続いていました。これに対して政府は抜本的な対策を講じないまま、長期債務の大部分を日本国有鉄道清算事業団(国鉄清算事業団)に切り離す形で、問題解決を先送りにしています。バブル景気で所有する土地の価格は跳ね上がったものの、政府内では地価高騰をあおるとして売却に反対する意見も多く、バブル景気が崩壊すると、価格は急落し、精算計画は破綻してしまいました。
さて、現在、JR各社をはじめとする大企業はカーボンニュートラルを企業の目標として掲げていますが、一方で、パリ協定からの離脱を決めた米国のトランプ政権は脱炭素から親炭素へと舵を切っています。業界約600社で構成され、100年以上の歴史のある米国石油協会は、大統領選の決着がついた直後、トランプ氏への書簡の形で、5つの政策ロードマップを提案しました。消費者に電気自動車を強制しない、天然ガスの輸出を増やす、政府の土地でエネルギー生産を増やすといった内容になっています。
1月20日にトランプ大統領が署名した大統領令の方針と軌を一にする5つの要望のうち、バイデン政権から転換の振れ幅が大きいのが、電気自動車義務化の廃止と並んで天然ガスの輸出増です。バイデン政権は安全保障、環境配慮などの理由で、自由貿易協定を結んでいない国への輸出を一時停止し、輸出の目途が立たたなくなった一部石油会社は増産体制をストップさせました。これに対し、トランプ大統領はエネルギー増産をすすめる立場から、大統領選の最中、直ちに再開して増産計画を許可すると表明しています。
トランプ大統領が打ち出した国家エネルギー非常事態宣言のもとでは、環境という、これまで最優先されるべきだとされ、強い説得力のあった言葉が神通力を失ってしまいました。その象徴が、メタン排出量に対する課税や罰金の廃止を巡る動きです。メタンは二酸化炭素に次いで地球温暖化に影響があります。排出量が多いのは石油、天然ガスの生産過程で、国際エネルギー機関によると、米国の石油、ガス企業の排出量はロシア、イラン、サウジアラビアを上回り、世界最多です。排出量を減らすため、バイデン政権下では、昨年12月、環境保護庁が大口排出者に対し、1トン当たり900ドルを科す最終規則を発表しました。今回の大統領選挙で、排出者の業界団体がトランプ大統領に多額の寄付をしたことが知られています。政策への影響力は強まりそうで、今後、政府がメタンへの課税を緩める政策に転じると、足かせのはずれる石油、ガス会社は増産に動きやすくなることは間違いありません。
地球温暖化を止めるには石油、ガスから再生可能エネルギーへの転換が必要です。トランプ政権は積み上げてきた環境対策をどこまで逆流させるのか、そして、パリ協定のもとで脱炭素をすすめる欧州や日本にどう影響するか、弊社でも注目して参ります。