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日本でも世界でも、台風やハリケーンの強大化など、気候変動の影響が大きくなってきているなか、今後の二酸化炭素の排出を減らす(カーボンニュートラル、脱炭素)だけではなく、既に大気中に排出された二酸化炭素を吸収し、除去していこうとする活動も目立ちはじめました。陸上生態系による吸収(植林や森林管理)のみならず、海洋生態系による吸収(ブルーカーボン)に注目が集まってきています。
神奈川県葉山市で2006年に発足した葉山アマモ協議会は、現在、地元の漁業協同組合、小学校、ダイビングショップといった多様なメンバーによって構成されています。かつては葉山にもアマモの広大な藻場がありました。藻場は、多くの魚が産卵、成長する場を提供することで漁業を支えています。その藻場が減少するにつれて、魚の種類も少なくなっていく状況に、地元の人々は危機感を感じていました。そこで、ダイビングショップ、小学校、環境に関心の高い漁師さんなどが中心となり、様々な人に声をかけ、アマモ場を再生する取り組みをはじめ、これが協議会発足のきっかけとなっています。
アマモ場の保全活動として、15年以上にわたって続けているのが、地元の小学校の児童による、地元のアマモ種子を用いた種苗をつくる活動です。育てられた種苗は漁業者とダイバーによって、アマモが衰退した海域に植付けられます。今年2月には、小学生が育てたものも含めて約500本の苗が植え付けられました。植え付けをおこなった藻場のモニタリングはダイバー、研究者、漁業者が連携しておこなっており、植え付けから2週間後にモニタリングした際は、50~70cmの花枝が伸長している様子が観察されたそうです。
一方で、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、カーボンニュートラルを目指す活動が逆風にあっています。欧州は液化天然ガスの調達を急ぎ、石炭発電の稼働を増やしはじめました。最近、銀行や投資家の環境関連の投融資にも、矛盾や問題点が浮かび上がっており、脱炭素の取り組みが試練を迎えています。
世界の主要な銀行や投資家は、ここ数年、石油、石炭、天然ガスなど化石燃料企業への投融資を減らす姿勢を鮮明にしてきました。ところが、その裏側で、プライベート・エクイティファンドが化石燃料企業への投融資を増やしていることは、それほど知られていません。ある団体の最近の調査では、世界の大手プライベート・エクイティファンド8社が保有するエネルギー、化石燃料の資産の合計は、世界の5つの銀行が2021年におこなった化石燃料産業への融資総額に匹敵していることがわかっています。プライベート・エクイティファンドは大手銀行並みに化石燃料企業に投融資していて、場合によっては、環境対策のためにダイベストメントをすすめる銀行が手を引いた分の肩代わりしているのかもしれません。
そして更に問題とされているのは、多くの年金基金がプライベート・エクイティファンドに投資していることです。ESGを重視した運用を掲げつつ、プライベート・エクイティファンドを通じ、化石燃料企業に間接的に投融資しています。
また、運用成績の高い世界のESGファンドのポートフォリオには、大手石油会社が入っているケースが少なくありません。それらの会社は、Eで低くなった点数をSとGで挽回して結果的にESG優良企業になっており、こうしたファンドを買う投資家は、ESG重視を掲げながら、環境は重視していないという矛盾を抱えています。
ロシアによるウクライナ侵攻が政府や企業の環境対策に試練を与えている一方で、投融資の世界では、これまですすめてきた取り組みに見直しの機運が高まっているところです。弊社でできることは限られておりますが、カーボンニュートラル達成のお手伝いをしていければと思っています。