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早いもので3月も中旬となりました。新年度から、新しい環境で学業や仕事に取り組むことが決まっている方もたくさんいらっしゃるに違いありません。あるいは、受験や面接を控え、準備に追われている方も少なくないでしょう。いずれにしましても、いま置かれた環境で最善を尽くし、この年度末を過ごしていきたいところです。
意味合いは異なりますが、環境ということでいえば、近年、ESG(環境、社会、企業統治)投資が資本市場の大きな潮流となっています。2006年に国連が責任投資原則を公表すると、欧米を中心にESG投資は急速に拡大しました。日本では責任投資原則制定後もESG投資に取り組む機関投資家は極めて限られていましたが、2015年、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則への署名を表明したことにより、日本における資産運用は劇的に変化しています。ESG投資残高でみると、少し古いデータですが、2019年末時点の日本のESG投資市場は世界第3位の規模です。GPIFの責任投資原則署名に先立ち、2014年に金融庁は日本版スチュワードシップ・コードを制定し、翌2015年には東京証券取引所が上場企業に対するコーポレートガバナンス・コードを制定しました。このダブルコードの制定により、インベストメント・チェーン健全化の枠組みが整っています。そしてGPIFによる責任投資原則署名の表明は、日本の資産運用業界をESG投資へと向かわせる決定打になったといえるでしょう。
ESG投資の進展に伴い、そのパフォーマンスはどのようなものであるのか、パフォーマンスをどのように評価するのか、また、企業においてそうしたパフォーマンス評価に耐え得るような情報開示をどのようにおこなうべきか、などといった点に注目が集まるようになっています。こうしたパフォーマンス評価に際しては、企業による情報開示を何らかの形で加工したうえで、投資家に提供しようとする情報サービスも急速な勢いで成長しており、ESGに対する取り組みやその効果の度合いといったパフォーマンスをESGスコアといった形で提供するESG評価機関の活動も活発です。ESG情報は財務情報とは異なり、必ずしも数値に表せない非定型的な情報も多く、投資家からすれば、労力がかかることに加え、判断の難しい面もあるなか、データの集計・分析をおこなったうえで定量的に活用可能なスコアなどの形で提供できるESG評価のサービスの必要性は年々増しています。
一方、ESGスコアに関しては、その評価の内容や手法に様々な議論があるのも事実です。そもそも優れたESGへの取り組みとは何か、よい企業とは何を意味するのか、といった本質的な問題に関する明快な解はいまだ得られていません。こうした状況下、様々な評価機関が林立し、独自の手法を用いてESGスコアを提供し、しかもその手法の全貌が必ずしも明らかになっていないことは、ESG投資の今後や、投資対象である企業のサステナビリティへの取り組みに大きな影響を与えかねないでしょう。今後の課題として、ESG評価機関によるESGスコアの評価内容を検証するとともに、各機関の評価内容の違いを明らかにすることによって、ESG評価の現状を示していくことがあげられます。それが実現すれば、資本市場における的確な情報の活用、企業におけるよりよい情報開示が促進されるに違いありません。
さて、弊社は一昨年10月にサステナビリティ委員会を設置しました。社会が直面する様々な危機に対し、弊社が解決できる領域を広げ、社会にとってなくてはならない存在になれるよう、努めて参ります。