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2020年5月、少子高齢化、若年労働者層の減少といった社会の変化を年金制度に適切に反映させるべく、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、今年4月から段階的に施行開始となりました。年金の受け取り開始時期に関する選択肢の拡大、在職中の年金の受け取り方の見直し、確定拠出年金(DC)の加入可能要件の見直しなどがおこなわれていますが、特に注目すべきは、今月から開始となった短時間労働者(週所定労働時間20時間以上、月額賃金8万8000円以上、継続して2ヶ月を超えて使用される見込み、学生ではない)の社会保険(厚生年金、健康保険)適用拡大です。これまで社会保険の適用義務があったのは従業員数500人超の企業でしたが、今改正で、その範囲は段階的に拡大されていきます。既に今月からは100人超になっており、2024年10月には50人超にまで拡大されていく予定です。
これまでは、社会保険加入ができないという理由で、パートやアルバイトの採用がうまくいかないケースもあったでしょう。今回の社会保険適用拡大を機会に、パートやアルバイトに対する福利厚生もしっかりしている企業であると示すことで、人手不足が深刻な業界でも、人材の獲得がすすんでいくかもしれません。企業側には、社会保険の加入手続きや保険料の増加といった負担が生じるものの、安心して長く働ける企業であると、従業員に感じてもらえることでしょう。
次のお話も福利厚生に関するものですが、格付投資情報センターの『年金情報』が企業型確定拠出年金(DC)の大手運営管理機関4社に集計を依頼した2022年3月末時点の加入者運用利回りは、12ヶ月利回り(3社平均)が3.79%で、同じ期間の確定給付企業年金(DB)の平均利回りを上回りました。制度加入からの累積運用実績を年率換算した通算利回り(4社平均)は4.20%となっています。
集計は半年ごとに実施しており、12ヶ月利回りは三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、野村證券の3社が、通算利回りはみずほ銀行も合わせた4社が集計結果の提供に協力しました。各社が集計した加入者の平均運用利回りを『年金情報』が単純平均しています。各社が集計する12ヶ月利回りは、掛け金の拠出開始から1年以上経過した加入者が対象となり、2022年3月期の場合、2021年3月末までの入社です。2022年3月期の12ヶ月は、株式相場がコロナショックから反騰した前年同期の13.94%からは大きく低下したものの、2020年9月期から4半期連続のプラス利回りとなりました。国内株式、国内債券、外国株式、外国債券の4資産のうち、収益を最も押し上げたのは外国株式になります。
12ヶ月利回りの半年ごとの推移を、企業型DCとDBで比べてみると、過去3半期連続で企業型DCがDBの利回りを上回りました。株式相場が対前年で上昇している局面では、企業型DCがDBを上回る傾向があります。一般的にDBでは予定利率の達成を目指し、必要以上のリターンを追うことはしません。高リスクが裏目に出て大きなマイナスが生じ、年金財政に不足が生じると、母体企業に追加的な掛け金拠出を求めなければならなくなるからです。また、退職給付会計を通じて母体企業の財務にマイナスの影響が及ぶことを恐れ、運用リスクの抑制を優先するケースも少なくありません。
これに対し、企業型DCにはDBやその母体企業が強いられる制約がなく、加入者個人の判断や考え方次第となります。預金や保険といった元本確保型商品を中心に掛け金を管理する安全志向派と、株式運用やバランス型投信に資金配分するなど、運用リスクをとる積極派とに分かれますが、ここ数回の調査結果からは、積極派が増えている様子が伺われ、今回の調査結果も、概ねその傾向を裏付けたものになりました。
さて、弊社のi-Bondなど不動産特定共同事業商品が企業年金に採用されるケースはまだほとんどないものと思われますが、いずれ注目される場面がやってくるかもしれません。その際には、弊社でも企業年金向けの商品を提供していくことができればと思っています。