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早いもので、今年も1年の3分の1以上が経過しました。新型コロナウイルスの影響で、例年とは異なるゴールデンウィークを過ごされた方も、たくさんいらっしゃるに違いありません。
昨年は公的年金にとって大事な節目で、5年に一度おこなわれる財政検証の年でした。その結果はというと、所得代替率(現役男性の平均手取り収入額に対する年金額の比率)が61.7%となり、2014年の62.7%を1.0ポイント下回っています。財政検証は2004年の年金改革で導入された仕組みで、5年ごとに財政検証を実施することが法律で規定され、今回で3度目です。マクロ経済スライド(物価上昇率をそのまま年金額に反映させるのではなく、将来世代の負担を軽減させるため年金額の抑制をおこなうもので、公的年金の被保険者数の変動率と平均余命の伸び率によって年金額を調整するもの)による給付と負担の均衡を自動的に図る仕組みの下、国民年金と厚生年金の長期的な財政の健全性を検証しています。2004年以前は将来給付に見合う保険料率を算定する財政再計算がおこなわれていましたが、年金改革で保険料固定方式による財政フレームワークが構築されて財政検証に変更されました。公的年金の給付と負担の均衡は、将来にわたるすべての期間で均衡させる永久均衡方式から、概ね100年間での均衡を図る有限均衡方式になっています。有限均衡方式は、財政均衡期間の最終年度において1年分程度の年金給付費が賄えるだけの準備金を残したうえで、積立金を取り崩していくものです。
今後、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の減少が2025年から本格化する一方、2022年から団塊世代は75歳になり、すべての団塊ジュニア世代が65歳となっている2040年には高齢化のピークがやってきます。少子高齢化が進展し、所得代替率は低下の一途です。社会保障費が増大していくなか、公的年金の持続可能性を高めるための制度改革が求められています。公的年金は国民の老後所得保障の基礎をなすものであることにかわりはなく、国民が安心して暮らせる社会保障制度の確立は急務です。
ところで、高齢者の生活は蓄積された資産の合理的な取り崩しを必要とし、仮にインフレーションの時代が到来するといった重大な環境変化が生じた場合には、資産のもち方を的確に修正していかなければなりません。しかし今後、多くの高齢者が認知症を抱えると推計され、昨年の金融庁・金融審議会作成の報告書では、90歳代では男性の5割、女性の7~8割となっています。ですから、既に認知能力が低下してしまった高齢者に対する十分な説明や更なる金融・投資教育は意味をなさなくなり、高齢者がそもそも判断をしなくて済むよう、従来とは大きく異なるアプローチが必要です。例えば、現行の公的年金の受給開始時期は65歳を基準とする繰上げ・繰下げ可能な範囲(60~70歳)で個々人の選択に委ねられていますが、認知能力が低下した後の判断を回避するひとつの方法として、認知能力が十分あるうちに保有資産を合理的に取り崩して引退直後の一定期間の生活を下支えし、その後に受給開始を遅らせれば80~90歳代の認知能力の低下した時期の受給額を大きく増やすことができます。しかも給付は物価連動ですから、万一インフレーションが起きても給付の実質価値は自動的に確保され、これにより、高齢で認知能力が低下してからの保有資産取り崩しの判断やインフレに負けない運用のための判断が不要になるでしょう。受給開始時期の選択は個人的な選好の問題ではあるものの、保有資産の取り崩し、公的年金受給開始時期の選択、そして、認知能力低下の可能性のもつ意味を真剣に考えていかなければなりません。弊社でもそれらにどう関与すれば、より一層皆様のお役に立てるようになるのか議論を重ね、実行して参ります。