2020.05.25社員ブログ

波平さんモデル

本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。

早いもので、あと1週間ほどで6月です。金融庁金融審議会の市場ワーキング・グループが昨年6月に作成した「高齢社会における資産形成・管理」が大きな話題になってから、間もなく1年になろうとしています。高齢化時代における資産形成にとどまらず、経済・社会への影響を各層に考えさせるきっかけとなりました。

高齢社会や人口減少という環境は、従来の経済学で前提としてきたモデルとは異なっています。例えば、私が以前にお会いした、ある著名なエコノミストの方は、長年にわたって常識とされてきたものが、高齢社会のなかで変容していく様を、「波平さんモデルから人生100年モデルへの転換」と名付けました。波平さんは国民的なアニメであるサザエさんの父親で、年齢は54歳とされているそうです。アニメの原作漫画の全国紙連載がはじまった終戦間もない1950年頃は、サラリーマンの一般的な定年は55歳、男性の平均寿命は60歳に達しておらず、想定されるモデルでは人生すべてが現役世代で完結し、老後はなく、年金も介護も高齢者医療も必要としない時代でした。それが今日、人生100年モデルとなり、男性の平均寿命も80歳を超えて定年以降の老後が何年も続くので、その間の経済的な収入を賄わなければならず、年金や資産運用が必要な状況への転換が生じています。

個々人の人生は様々ではありますが、生まれてから学業を終了するまでは、基本的には親に経済的な支援をしてもらい、20歳代前半で就職後、自らの所得を得て経済的に独立していくでしょう。その後は転職や起業もあるかもしれませんが、健康であれば、65歳頃、主たる職場を退職するというのが一般的です。その間、結婚をして子どもが生まれると、育児をしつつ、より広い住宅を借りる、あるいは取得し、快適な家庭生活を目指していこうと努力するに違いありません。50歳代半ばを過ぎれば退職後に必要な資金の準備に取りかかり、老後を過ごす住宅や介護施設の検討もはじめるでしょう。

一方で、人生を通して多くの不確実性に直面することにもなります。例えば、所得の不確実性です。就業初期の段階でパートタイム労働や契約社員といった非正規就業に就き、それを何年も続けると、そこから正規就業に就いて所得を増加させることは容易ではありません。また、就業期間の途中までは順調に所得が伸びていても、企業の業績が悪化し、場合によっては倒産に巻き込まれて所得が急激に低下したため、転職を余儀なくされる場面もあるでしょう。一般に所得の不確実性は年齢を重ねるとともに累積され、同一世代内での所得格差を拡大させていきます。そして雇用以外でも病気、事故、災害などの不可抗力的な事態に見舞われるリスクにも晒され、更には、これこそ人生最大の不確実性といえそうですが、自分自身の寿命は誰にも分かりません。勿論、生命保険や終身年金で最低限のリスク回避はできても、人生設計において、自分の寿命が分からないということは様々な意味で最適な資源分配を妨げる一因です。加えて、親の寿命も分からないとなると、介護に必要な期間や住宅購入のタイミングに大きな不確実性をもたらします。

これから団塊世代が後期高齢者になり、本格的な少子高齢社会がやってくることは間違いありません。人口水準の落ち着き先を断言することはできませんが、江戸時代にみられたような総人口3000万人程度の定常人口経済に変容していくことも考えられます。弊社でも長期的な見通しに基づいて、社会から求められるであろう商品・サービスの提供を続け、皆様の人生における不確実性解消のお役に立てるよう、努めて参ります。

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