2020.06.22社員ブログ

投資家と企業の対話

本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。

夏至の昨夜、2003年からおこなわれている「100万人のキャンドルナイト」が全国各地で実施されました。夏至と冬至の20時から22時の2時間、電気を消し、ろうそくの灯火の下、各人が環境、平和、災害復興などに思いを巡らします。今年は新型コロナウイルスの感染拡大から、医療従事者への感謝の気持ちを抱きながら過ごされた方もたくさんいらっしゃるでしょう。新型コロナウイルスの向こう側にある新しい世界を照らすことができたに違いありません。

3月決算企業の株主総会が本格化してきました。企業統治改革の進展で投資家が議決権行使基準を厳しくする動きを強めていますが、今年はコロナ禍もあって、より長期目線でサスティナビリティ―(持続可能性)に注視する投資家が増えています。関心はG(企業統治)からE(環境)とS(社会)にも広がりをみせているところです。

かつてのシャンシャン総会は崩れ去り、単なる不祥事や業績不振に限らず、コーポレートガバナンス・コードの改訂で持ち合い株式、親子上場など企業統治への見方が厳しくなっていることから、近年では取締役選任案への反対票比率が高まっています。例えば、ある大手運用会社では今年から、上場子会社に過半数の独立社外取締役などの基準を求め、満たさない場合は取締役の選任に反対する意向を示しました。

今年注目されているのがSとEです。Sの試金石となりそうなのが女性役員の登用で、欧米の大手運用会社では、女性取締役が不在のTOPIX100に該当する日本企業について取締役の選任に反対したり、女性取締役が不在の取締役会を支持する指名委員会やトップの選任に反対票を投じています。こうした傾向は誰もが知っている有名企業においても例外ではありません。というのも、TOPIXを構成する企業の過半は女性取締役が不在だからです。ダイバーシティの観点からみると、日本企業が海外投資家を引き付けるには、まだ改善の余地があるでしょう。

Eについては、今年1月中旬、世界最大とされる運用会社のCEOが、気候変動は企業の長期的な業績を決める要素になりつつあると指摘し、対話を通じて投資先企業の重大な気候変動リスクへの対策や、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った気候関連リスクの情報開示に進展がみられない場合、経営陣に反対票を投じる意向を示しました。ESGスコアが最低水準にもかかわらず、点数向上に向けた具体的な計画を策定していない投資先には取締役選任案に反対する方針の運用会社もあります。

そして今年はサスティナビリティーリスクに新型コロナウイルスという新たな脅威が浮上し、企業とのエンゲージメント(対話)課題が急速に増えました。感染拡大で企業の供給網が分断され、特に米国では一時解雇や給与支給延期を実施する企業が散見されます。従業員の感染防止対策、雇用維持、海外事業所の対応など持続的成長に向けた課題が浮き彫りとなり、これらをどう見直していくのか、投資家と企業の対話は続いているところです。一方で、新型コロナウイルスの影響によって企業業績が大打撃を受けるなか、企業の手元資金がなくなると、従業員の雇用などを含めてサスティナビリティーリスクが生じてしまうことを踏まえ、議決権行使について柔軟に対応する投資家もいます。

現下、産業構造や従業員の働き方は大きく変化し、企業の持続可能性について経営陣がどう考えているのか、投資家は見極めようとしているでしょう。弊社もステークホルダーの期待に応え、決して見限られることのないよう、努力を積み重ねていかなければなりません。

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