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格付投資情報センターが、今春の主要な確定拠出年金運営管理機関の受託状況を調査したところ、加入者増加ペースの鈍化傾向が浮き彫りになっています。確定給付企業年金からの大型移換の影響により、一年前と比べて資産残高を大きく上回ったものの、この影響を除く実質ベースでは増加率が低下しました。確定拠出年金の拡大ペースは一桁台での巡航速度になっています。
具体的に主要運営管理機関の状況をみると、資産を1000億円以上積み増したのは三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、日本生命保険の3社となりました。三井住友信託銀行は受託残高が3兆2859億円と前回調査より7504億円増え、三菱UFJ信託銀行も1645億円増えて残高が2兆円を超えています。その背景にあるのはパナソニックやソニーの退職給付制度改革です。昨年度、約7000億円の資産が確定給付企業年金から移行しました。一方で、残高2位のみずほ銀行は約500億円の増加にとどまったため、首位の三井住友信託銀行との差が開き、3位の三菱UFJ信託銀行との差は約1400億円に縮まっています。野村證券と第一生命保険の残高は微減です。
信託協会が公表した今年3月末時点の企業型確定拠出年金の資産総額は13兆5215億円で、昨年と比べて8.3%増えました。ただ、前述の7000億円の大型資金移管がなければ、増加率は2.7%にとどまり、2年連続で前年の増加率を下回ったことになります。
加入者数でみた大手の序列には変化がありませんでした。上位3社(三井住友信託銀行、みずほ銀行、三菱UFJ信託銀行)間にはそれぞれ20万人以上の差があります。この一年で最も増やした三井住友信託銀行の増加数は約7万3000人です。確定拠出年金導入企業による運営管理機関の変更や導入企業の再編の要因がない限り、当面は3社間の順位が逆転する可能性は高くないでしょう。一方で、加入者数が拮抗する第一生命保険とりそな銀行では、今後、順位が逆転する可能性が出てきました。第一生命保険は加入者数が足踏み状態で、今年調査の加入者数が昨年調査を下回っています。逆にりそな銀行は、この一年間で加入者数を3万3566人増やし、第一生命保険とりそな銀行の差は約2万1200人であるため、この状況が続けば逆転が視野に入ります。
さて、確定拠出年金や確定給付企業年金を含む日本の企業年金は、従業員の老後に備えた資金の管理が目的なだけに、これまでは収益性の観点からESGに対して慎重な態度をとっていました。事業会社や機関投資家が人権問題や温室効果ガス排出量削減といった課題に取り組まなければ、今後の営業活動や資金調達に支障が出る状況とは異なります。しかし、ここにきて社会的課題の解決と中長期的な企業の成長を結びつける価値観の浸透や運用上の利点が見直されています。
金融庁は今年3月、スチュワードシップ・コードを改定し、企業年金にもESGを考慮するよう求めました。資生堂やオムロンの企業年金がこの指針の導入を表明しています。7月に導入を決めたパナソニックの企業年金は、「企業は社会の公器との理念のもと、社会的責任を自覚し、職務の遂行をおこなっている。」、と背景を説明しています。今後、ESG投資の拡充を検討する住友金属鉱山の企業年金では、ESGは長期目線で運用すべき企業年金と親和性があるとして、株式運用の半分をESG関連銘柄に切り替える予定です。
海外では企業年金を含めた年金基金がESG投資を主導しています。中長期的な成長を重視する流れを受けて、今後も裾野は世界的に広がっていくでしょう。いずれは弊社も年金基金から該当銘柄として注目されるよう、これまで以上にESGを事業活動に取り込んでいきたいと考えています。