2021.01.12社員ブログ

日々と未来を見据えた・・・・

本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。

歴史を遡りますと、ちょうど32年前(1989年1月12日)、日経平均株価の終値(3万1143円45銭)が前日と同一となり、「前日比変わらず」という非常に珍しい出来事が起こりました。1949年に算出をはじめてから現在に至るまで、初めてのことです。銭から万までの位があるなかで、数字が一致する確率はどれほどのものなのでしょうか。バブル景気の真只中であった当時、この異例の事態について、更なる株価上昇の前兆では、といった解釈もなされました。実際のところ、この年の大納会では、史上最高値となる3万8915円87銭を記録しています。

「企業の使命は、株主のために、ひたすら利益追求することである。」

ノーベル経済学賞を受賞(1976年)し、1980年代には日本銀行の顧問を務めたミルトン・フリードマンは、かつて、こう喝破しました。米国の株主利益第一主義を象徴する発言ですが、いまや企業の存在意義は、株主のみならず、顧客、地域社会といったすべてのステークホルダーを重視することへと変遷しています。企業がESG(環境・社会・企業統治)への取り組みをすすめているのも、この流れの一環であることは間違いありません。

米国大統領就任を間近に控えた民主党のバイデン前副大統領は、トランプ大統領の米国第一主義を改め、国際社会を牽引するリーダーに復帰しようとしています。現政権は世界的なESGの潮流とも距離を置いてきましたが、風向きは変わりそうです。昨年11月中旬、米国証券取引委員会(SEC)の2名の委員が連名で提言を発表しました。その内容は、企業に対して、ESG情報開示ルールづくりへの取り組みを求めるものです。統一したフォーマットで気候変動リスクなどを開示し、投資家が企業を比較し易くなります。注目を集めたのは、提言者の2名とも民主党系の委員であったことです。ESG情報開示ルールを巡ってSEC委員の意見は分かれています。共和党系のある委員は9月の会合でESG投資とリターンの関係が不明確などと主張し、画一的な規則で企業を縛ることに否定的でした。トランプ大統領に指名された委員長も新たなルール策定に慎重で、議論は前にすすんでいません。

欧州は一足先に動いており、国際会計基準(IFRS)をつくる国際会計基準審議会(IASB)の母体組織であるIFRS財団は9月、乱立するESG情報開示基準の統一に向けた新組織設立を発表しました。IFRS財団の動きにはESG情報開示ルールの策定で主導権をとる狙いが見え隠れしています。企業の競争力を測る物差しで世界標準を握り、投資マネーを呼び込みやすくしたいのでしょう。以前も欧州はこうした考え方で日本や中国をIFRS陣営に取り込み、米国会計基準に対抗してきた歴史があり、ESGでもその再現を狙っています。

ESG運用を促す国連の責任投資原則(PRI)によると、この原則に署名した年金・運用機関の資産総額は100兆ドルを突破しており、本社所在地がどこの国であれ、世界のESGマネーを取り込むには、開示を充実させていかなければなりません。バイデン氏はかねて気候変動問題に真剣に取り組むことを強調し、国際的な枠組みであるパリ協定に復帰すると明言してきました。今後の米国の動向が注目されるところです。

さて、ESGといった社会的責任に重きを置いたからといって、それだけで企業の持続可能性が高まるわけではありません。経営学者のピーター・ドラッカーは、「企業の第一目的は存続して日々の糧を稼ぐことである。」といっています。また、「事業活動とは長期的な未来に焦点を合わせることであるから、企業経済学の指導原理は利益の最大化以上に損失を回避することであり、企業は事業リスクに備えるため、余剰を生み出さなければならない。」とも付け加えています。日々と未来を見据えた両利きの経営を弊社も目指して参ります。

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