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昨年11月、デンマークのシンクタンクであるハピネス研究所は、報告書『コロナ禍の幸せ(Wellbeing in the age of COVID-19)』を公表しました。これは、パンデミックの初期段階の幸福と社会行動の変化を調べるためにおこなわれた調査結果に基づいています。97ヶ国の3211人を対象とし、昨年4月から3ヶ月間、6回にわたって実施(累計サンプル数1万2000)されたものですが、ここでその内容を少しご紹介します。
コロナウイルスの感染拡大は感情的な幸福と強い関わりがありました。特に不安感への影響が大きく、100万人あたり新規感染者が100人増えると、7200人が不安を感じることになります。また、最も幸福に大きな影響をもたらす要素は「孤独」であることがわかりました。深刻な孤独を感じるリスクが最も大きかったのは、若い世代、仕事がない人、パートナーがいない人です。同居は必ずしも孤独感を防ぐとは限りません。独身者の場合、3人以上と同居している人は、ひとり暮らしの人よりも孤独を感じていることがわかりました。一方、最も孤独を感じていないのは、パートナーと一緒に暮らしている人です。瞑想、友達や家族との会話、そして屋外で過ごすことは、孤独感の軽減に役立ちます。こうした結果を踏まえ、この報告書では、「もっと屋外で過ごそう」、「芸術や工作、DIYのプロジェクトをおこなおう」、「瞑想しよう」、「友達や家族に手を差し伸べよう」、「身近な人と連絡を取り合おう」、「健康に過ごすことを忘れずに」という6つのアクションプランの提案がなされました。
さて、前述の調査では、深刻な孤独を感じるリスクが大きい人として、若い世代をあげています。次にご紹介する日本の事例は、ある高校がおこなっている取り組みですが、孤独になってしまう若者に手を差し伸べるための、何らかのヒントになるかもしれません。
中学校までの義務教育と異なり、高校生には中退のリスクがあります。その背景は、家庭の経済的事情で生活や通学が厳しいこと、学力不足、不登校、ひきこもりなど様々です。こうした事態に対応する相談支援機関や行政の担当窓口はあるものの、高校生が自らそこを訪問し、見ず知らずの大人に相談するというのは、現実的には容易ではありません。自分の困り事をどこかに相談するのは、それが深刻なものであればあるほど勇気がいることです。困っているのは恥ずかしいことだと思い込んでいる場合もあれば、それは自分のせいだ、と指摘されることへの不安、相談してもどうにもならないという諦めなどがあるのでしょう。こうした思いは、人生経験の乏しい若い世代ほど強いと考えられます。そして、もしそのまま高校を中退してしまえば、その後の就労なども難しくなり、かなりの貧困リスクを抱えることになるかもしれません。だからこそ、高校生が日々通う学校内に、誰でもいける居場所があり、親でも先生でもない大人がいて、何気ない会話のなかで高校生が困り事を吐露できる環境整備が必要です。
大阪府立のある高校には居場所カフェが設置され、そこは家庭、学校に次ぐサードプレイス(第三の場所)であり、ここで高校生が、この大人は自分を理解してくれる人かもしれない、という信頼の期待値(信頼貯金)を増やしていくことを通じ、相談できる大人をもつという人生経験をしていく場となっています。また、信頼貯金による大人とのつながりは卒業後も消えてなくなることはなく、母校の居場所カフェをいつでも訪れることが可能です。母校のなかにつながり続けられる場があることは、卒業生の自立を支える大切な社会資源となります。何かあったときに、助けて、といえるようになるための経験を若いうちにしておくことは、その後の人生での大きな支えとなることは間違いありません。
お話は変わりますが、信頼貯金を増やしてもらえるよう、企業もステークホルダーの皆様の期待に応えていく必要があります。弊社も不動産賃貸をベースに、お金の第3の置き場(サードプレイス)であるマリオンのボンドを通じて信頼貯金を増やしていくつもりです。