2021.03.29社員ブログ

縛りを緩めるものも・・・・

本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。

今年1月下旬、持続可能性に関する雑誌の出版やリサーチをおこなっているカナダのコーポレート・ナイツは、企業の持続可能性に関する業績のランキング「The 2021 Global 100」を公表しました。こちらによれば、第1位はフランスのシュナイダーエレクトリック(産業複合企業)、第2位はデンマークのオーステッド(発電会社)、第3位はブラジルのブラジル銀行(金融機関)となっています。

日本企業のトップは第16位のエーザイです。その他、シスメックス(第32位)、コニカミノルタ(第41位)、積水化学工業(第51位)、武田薬品工業(第71位)となっています。企業数は2年連続で減少しましたが、50位以内にランクインしたのは昨年の1社から3社に増えました。

なお、今年のランキングの対象は2019年の売上高が10億ドル以上の企業です。トップ100社を選ぶにあたり、まずは、環境に深刻な被害を与えていないか、深刻な人権侵害をしていないか、など21の基準でスクリーニングがおこなわれました。このプロセスを経て選ばれた343社について、環境、社会、企業統治、経済の4分野における合計24のKPI(重要業績評価指標)を用いて順位をつけ、上位100社が、世界で最も持続可能な企業として公表されています。

今年の特徴は、新型コロナウイルス感染とブラック・ライブス・マター運動(アフリカ系米国人に対する警察の残虐行為をきっかけとしてはじまった人種差別抗議運動)の影響が指標に反映されたことです。具体的には、有給休暇の付与状況や役員や幹部の多様性に関するKPIが追加されました。

さて、世界的な関心の高まりから、日本でも環境問題や社会問題の解決に向けて企業が発行するESG債の裾野が広がってきています。最近では、資金調達の使途や二酸化炭素排出に関する縛りを緩めるものも登場するなど、更なる市場拡大も期待されているところです。

新しいESG債のひとつはサステナビリティー・リンク・ボンドと呼ばれ、国内ではヒューリックが昨年10月に初めて発行し、12月には芙蓉総合リースも続いています。従来のESG債と大きく異なるのは、資金使途を決めなくても構わないこと、利率などの条件が後から変わる可能性があること、の2つです。グリーンボンド(環境債)やソーシャルボンド(社会貢献債)は、太陽光発電施設の建設や感染症対策の支援といった事前に決めた事業にしか調達資金を使うことができず、各事業への資金ニーズは限られるため、一般的に発行額は大きくできません。一方、サステナビリティー・リンク・ボンドは調達資金の使い道が原則として企業の自由で、一般的な債券で調達するのと変わらず、違うところといえば、達成目標を設定し、その到達状況によって債券の条件が変化することです。例えばヒューリックの場合、2025年までに使用電力を全て再生可能エネルギーに切り替えるなど2つの目標を設定しました。債券の利率は0.44%ですが、目標が達成できなければ2026年から0.54%に上がります。企業にとっては利払い負担が増えるため、環境目標を達成するインセンティブになるものです。

もうひとつの新しいESG債はトランジション・ボンドと呼ばれています。現在は二酸化炭素排出量が多く、グリーンではないために環境債を発行しにくい企業が、グリーン化への移行(トランジション)をすすめるのに役立てることができます。国内ではまだ発行例はありませんが、経済産業省などを中心に仕組みづくりがすすめられ、来年以降、発行が本格化するかもしれません。日本は国内産業に占める製造業の比率が比較的高くなっており、グリーンな社会に一足飛びで到達するのは難しく、トランジション・ボンドの潜在的な発行ニーズは大きいとされています。

ESGを考慮した運用は社債投資家の間でも広がり、目標額を定める投資家も増え、呼応してESG債の発行額も増えつつあるものの、需要の増加を受け止め切れていないのが実情です。これまで環境債には縁遠かった企業にサステナビリティー・リンク・ボンドやトランジション・ボンドの発行が広がれば、ESG債市場全体が拡大します。弊社もいつか関与できる場面がやってくるかもしれません。

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