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1990年、フィンランドで世界初となる炭素税の導入から、既に30年以上が経過しています。炭素税とは、温暖化ガス排出量に応じた課税で、政府により、税率という形で価格が設定されるものです。この炭素税をきっかけとして、現在、世界各地でカーボンプライシングが地球温暖化対策の有効なツールとして脚光を浴びています。これまで温暖化ガスの排出に対しては、化石燃料やエネルギーの利用にかかる購入費用、排出による温室効果の外部不経済によってもたらされる費用など、それらが人々によって即座に意識される機会はほとんどありませんでした。カーボンプライシングは、無料で排出していた温暖化ガスの費用を見える化することにより、排出量削減や低炭素技術への投資を促進することを目指すものです。
カーボンプライシングは、政府による炭素税、排出量取引制度、民間企業によるインターナル・カーボンプライシング(ICP)の3つに大きく分けることができます。排出量取引制度は政府が排出量の一定期間における温暖化ガス排出量の限度を定めるとともに、他の排出者と取引を認めるものです。炭素税は税率として価格が設定されますが、排出量取引制度では炭素の価格が排出量の需給で決定します。一方、ICPは企業内部で見積もる炭素の価格で、企業の低炭素投資・対策を推進する仕組みです。
世界のカーボンプライシングの導入状況をみると、前述のフィンランドによる世界初の炭素税導入、2005年のEUによる世界初の排出量取引制度導入後、世界銀行の支援策なども後押しし、2021年頃から導入する国・地域が増加しました。世界銀行の調査によると、昨年4月時点で46の国と32の地域がカーボンプライシングを導入あるいは導入の決定をしています。日本では地球温暖化対策のための税(温対税)が2012年度に導入されました。地方自治体レベルは東京都が2010年度から、埼玉県が2011年度から、排出量取引制度を導入しています。また、日本企業のICPの導入状況については、英国のある非政府組織(NGO)が2019年におこなった調査によれば、84社が既に導入済みで、業種は製造、サービス、素材、インフラ関連が中心です。2年以内に導入予定と回答した企業も82社ありました。
昨年10月、日本は2050年までに温暖化ガス排出量実質ゼロを表明しています。これを目指すにあたり、中間地点の目標をどう設定するのかも重要といえるでしょう。中間目標をしっかりとしたものにしておかないと、到底、最終目標にはたどり着けません。菅首相は2030年度の温暖化ガス削減目標を2013年度から46%削減し、更には50%の高みに向けての挑戦を続けていくと宣言しましたが、この目標は、今後排出する量に対する目標です。例えるならば、浴槽に流し込む水の量を絞っていくということになります。浴槽の水があふれそうになっているとしたら、まずは蛇口を閉めなければなりませんが、既に適正水位を超えていれば、蛇口を閉めたうえで、浴槽内の水も排水する必要があります。蛇口を閉めることで水位の上昇は抑えられますが、蛇口を閉めただけでは水位を下げることはできません。排水口を大きく開けば開くほど、水位はいち早く適正水位まで下がっていくでしょう。
気候変動も浴槽と同様で、大気中に蓄積された二酸化炭素は既に温暖化をもたらしており、新たに排出する分を減らしてゼロにするだけでなく、大気中からなくなる分を増やすことによって、濃度を下げていくことができます。大気中に排出された二酸化炭素の寿命は短くても数十年とされ、自然消滅を待っているだけでは、事態は好転しません。大気中の二酸化炭素をいかに除去していくのかが重要です。空気中の二酸化炭素を直接回収する技術の開発・実用化もすすめられ、また、植林も大事な取り組みとなります。更に、近年、海藻を育てることで藻場を再生し、海洋生態系によって二酸化炭素を吸収・固定化すると同時に、漁業や生態系を回復させる活動もはじまっています。
さて、弊社も企業として、温暖化ガス削減に無関心でいられるわけはありません。少しでも地球環境の改善につながるよう、何ができるのかを考え、実行して参ります。