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今年2月、経済協力開発機構(OECD)は、急速に変化している労働市場で日本が遅れをとらないよう、成人学習制度向上の取り組みを強化すべきとの報告書を公表しました。「Creating Responsive Adult Learning Opportunities in Japan(社会に対応する成人学習の機会をつくる)」と題されたこの報告書は、各国のスキルの需要、開発、活用状況などをまとめた報告書シリーズ「Getting Skills Right(しっかりとスキルを)」の日本版となります。OECDの予測によると、今後15年間で日本における職業のうち15%が機械化されるリスクが高く、39%が機械化の影響で大きく変化する可能性があるとのこと。また、国内産業構造の急速な変化、女性や高齢者の雇用、非正規労働の増加を受け、日本の労働人口構成は激変しており、これらの変化によって労働市場ではスキルの偏りが生じ、技能の向上や再教育の機会に対するニーズが高まるなか、同報告書は成人の学習機会へのアクセス、学習機会提供の対象者や市場ニーズと提供内容のマッチング、キャリアガイダンスなどが日本の課題であると指摘しています。更に、他の加盟国の好事例を紹介し、日本への政策提案も示しました。例えば、有給の教育・訓練休暇制度への補助金拡充、ITスキル不足の高齢者などを対象とした基本ITスキル開発事業の実施、市場ニーズと研修内容を合致させるための産学包括的協力協定の推進、外部キャリアガイダンスカウンセラー活用の啓発などがあげられています。
さて、次のお話も関連する内容になりますが、2002年、ユトレヒト大学(オランダ)の教授らによって確立されたワーク・エンゲイジメントという概念が、コロナ禍ということもあり、あらためて注目されています。ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、 「仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)」、「仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)」、「仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)」の3つが揃った状態として定義されるものです。つまり、ワーク・エンゲイジメントが高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしている状態にあるといえます。企業がワーク・エンゲイジメントを高める努力をすることで、従業員が仕事を通じて成長できていると実感でき、自己効力感(仕事への自信)が高まり、キャリア展望の明確化につながることは間違いありません。ここで、ワーク・エンゲイジメントに着目した取り組みを推進している株式会社福井(大阪府堺市)の事例を紹介します。
同社は創業100年を越える金物製造卸売業の老舗企業です。金物店やホームセンターへの卸売りに加え、近年はインタネット販売を中心に、農業用ハサミなど農業園芸資材を主力商品とした事業活動をすすめています。5年ほど前までは、営業部員の各々が担当エリアをもち、担当交代もほぼなく、いわゆる個人事業主が集まったような気質の企業でした。組織的な機能分化ができていなかったこともあり、離職者は少なくなかったそうです。こうした状況を打開すべく、2018年からワーク・エンゲイジメントを高める取り組みを実施しました。コミュニケーションは質より量である、をモットーに、階層別に個別面談をおこなっています。管理職は毎月必ず1回以上、部下と個別面談をしており、仕事の話に限らず、様々なやり取りをおこない、離職率は急激に低下しました。また、トップダウン型の組織として100年以上やってきましたが、変化の激しい時代には、意思決定のできる多くのリーダーを育成していった方が組織としての強さが増してくると考え、管理職への権限の移譲にも取り組んでいます。更に、定期的にワーク・エンゲイジメントを数値化し、課題が生じている点を見える化することで、解決に向けたアクションが取りやすくなりました。
株式会社福井は創業100年を超える老舗企業ですが、従業員の働きがいにも着目しながら、新たな組織改革に挑み続けています。その原動力のひとつは、従業員が自分の子どもに自信をもって入社を勧められる会社にしたいという強い想いであるとか。弊社も、より多くの従業員が自信をもって入社を勧められる会社に進化していければと考えています。