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今年6月、持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(Sustainable Development Solutions Network=SDSN)とドイツのベルテルスマン財団は、2015年の持続可能な開発目標(SDGs)採択以降、初めて達成状況が後退となる、2021年度版「持続可能な開発目標インデックス&ダッシュボード」を公表しました。SDSNは持続可能な開発へ向けて、学術機関や企業、市民団体をはじめとするステークホルダーの連携のもとに解決策を導き、持続可能な社会を実現するための最善の方法を明らかにして共有することを目的としているグローバルなネットワークです。現在、世界各地に活動の拠点が形成されています。
今回のレポートでは、新型コロナウイルス感染拡大が、至るところで持続可能な開発の妨げになっているとし、また、SDGs達成状況の世界的後退の主な要因として、パンデミックを端とする貧困率上昇と失業者数増加をあげています。パンデミックでは発展途上国における資金調達力の限界も浮き彫りになり、先進国よりもコロナ禍からの回復で遅れをとる可能性が高いことも指摘し、SDSN代表のジェフリー・サックス氏は、「SDGsの進捗回復には、世界的な税制改革や国際開発金融機関による融資拡大を通して、発展途上国の財政的余地を大幅に増やす必要がある。」と訴えました。
国連加盟全193ヶ国のSDGs達成状況を分析した指標では、今回も北欧3ヶ国(フィンランド:100満点中85.90点、スウェーデン:同85.61点、デンマーク:同84.86点)が上位を占めています。日本の点数は79.85点で、昨年度から若干上がったものの、順位では一昨年度15位、昨年度17位、今年度18位と、3年連続で下げました。日本の各目標の達成状況をみると、目標4(教育)など3つの目標で達成、目標5(ジェンダー平等)や目標13(気候変動)の5つの目標で、まだ深刻な課題あり、という低い評価になっています。
次も関連するお話になりますが、カカオ豆、コーヒー豆など日常に根付いた商品の産地では、児童労働や低水準の収入といった社会問題に直面しています。SDGsやESGへの関心の高まり、そして何よりも原料の安定供給のため、課題解決に取り組まなければなりません。
チョコレート原料のカカオ豆は西アフリカのガーナとコートジボワールの2国に世界生産の6割が集中しています。産地では児童労働、低収入など労働環境の問題が指摘され、産地の子どもたちはチョコレートを食べたことがなく、自分が何のために働いているのかわかっていないことも珍しくありません。国際労働機関(ILO)と国連児童基金(UNICEF)の報告によれば、コロナ禍で世界経済が打撃を受けるなか、児童労働に従事する子どもの数は20年ぶりに増加に転じました。特にアフリカでは顕著な増加率を示しています。こうした環境を少しでも是正するため、西アフリカの2国は昨年10月以降の出荷分から、カカオ豆の取引価格に1トンあたり400ドルを上乗せする農家支援策を導入しました。
産地主導の是正策も出はじめるなか、企業主導の取り組みにも注目が集まっています。日本では明治ホールディングス、森永製菓、ロッテなどがカカオ豆の生産者を支援しています。一方で、日本の場合、食品など最終製品に対する安値志向が強く、サステナブルな調達に切り替えたことで原材料費が上昇したという理由だけでは、値上げが難しいのが実状です。また、フードロスを問題視している消費者は少なくないものの、実際の買い物では、すぐ食べるにもかかわらず、わざわざ棚の奥の方からとることもあるでしょう。サステナブルな調達や産地支援はもはや喫緊の課題ですが、その解決には、企業努力と消費者理解の両輪をかみ合わせるための知恵と工夫が必要であり、弊社でも各人がその認識を高めていけるよう、努めて参ります。