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早いもので11月に入りました。あと2ヶ月で新年を迎えますが、今年の目標を立てられた皆様は、その進捗状況はいかがでしょうか。高すぎる目標を立ててしまい、熱意や能力の不足から、達成が難しくなっているという方もいらっしゃるかもしれません。
こちらは不足の対象が異なりますが、歴史を遡りますと、1973年10月初旬に勃発した第4次中東戦争に伴う第1次石油危機により、日本では、「紙が不足する、なくなる」という噂が流れ、全国でトイレットペーパーの買い占め騒動が起こっています。教科書に載せられていた写真(店頭で人々がトイレットペーパーを奪い合っている様子)を思い浮かべる方も少なくないでしょう。このきっかけとされているのが、ちょうど48年前(1973年11月1日)、大阪府豊中市の千里大丸プラザ(現ピーコックストア千里中央店)でおこなわれた特売だったとか。300人近い行列ができ、2時間で500個を売り切ったそうです。その後、来店した顧客が広告の品物がないことに苦情をつけたため、店では特売品でないトイレットペーパーを並べましたが、それもすぐに売り切れ、噂をきいた新聞記者が、「あっという間に値段は2倍」と新聞で報じたため、騒ぎが大きくなり、騒動に発展しました。
次のお話も不足に関するものですが、規模はかなり大きくなります。表面積の7割が海に覆われ、水の惑星とも呼ばれている地球ですが、人間が生活に利用できる淡水はわずかな量しか存在していません。水の需要は人口増加や経済発展とともに増えています。経済協力開発機構(OECD)によれば、製造業の工業用水や発電、生活用水の増加により、世界の水需要は2050年には2000年比で55%程度の増加見込みです。一方、世界各地で多発する熱波や干ばつといった異常気象による降雨量の変動が、水の利用可能量に大きな影響を与えています。
今年7月、最高気温が50℃を超す酷暑となったイランでは、水を求める市民のデモが相次ぎ、治安部隊との衝突で死者も出ました。農作物の一大輸出国であるブラジルでは、降雨量が減り、91年ぶりとなる水不足に見舞われています。収穫量の減少からコーヒーや砂糖の国際相場は上昇が鮮明です。
水不足は銅の生産にも影響を及ぼしています。生産工程には鉱石の粉砕、銅以外の不純物の除去などがあり、多量の水を使わなければなりません。世界一の銅産出国であるチリで多数の銅鉱山をもつ英国アントファガスタ社は、降雨不足から、今年の銅生産目標を引き下げました。
半導体生産にも大量の水が必要です。受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が拠点を置く台湾では、今年、過去半世紀で最も深刻な干ばつが発生しています。自動車や電子機器向け需要が急増するなか、水の問題が半導体不足をさらに悪化させかねません。
世界各地で水不足が深刻化するなか、経済活動を維持するためには限られた水の効率的な利用は不可欠ですが、水危機の解決は、ビジネスチャンスにもつながります。経済産業省によると、海外の水ビジネス市場は2019年時点で72兆円に上り、2030年には110兆円を超える見込みです。水ビジネスには、汚れた水を浄化して再利用する水処理、水道インフラの漏水防止、海水の淡水化など様々な分野があります。
日本にはこうした領域で世界トップレベルの技術力をもつ企業が少なくありません。例えば、海水を淡水化するのに使われる逆浸透膜の5割は日本製です。ただ、日本企業の水関連の売り上げ規模は、水メジャーと呼ばれるフランスのヴェオリア社など世界の水大手と比べれば、はるかに小さくなります。納入する部材は超一流でも、残念ながら今のところ、水プラントの設計・調達・建設から運用・保守まで一貫したシステムとして、世界レベルで受注できる状況ではありません。
投資家の間でも水への注目度は高まりつつあります。世界の水関連企業を運用対象とする上場投資信託(ETF)の価格は今年に入って急騰し、上場来の高値圏で推移しているところです。水そのものに市場で値段をつける動きも出てきました。昨年末、米国シカゴ・マーカンタイル取引所は世界で初めて水の先物取引を上場しています。世界が水不足という社会課題を解決できなければ、水の価格は高騰していくでしょう。ビジネスとしてはそれほど関与できませんが、弊社でも実現可能な範囲で水不足の課題解決に取り組んで参ります。