本日もアイボンドブログをご覧いただきまして誠に有り難うございます。
早いもので間もなく12月。今年も残すところ、あと1ヶ月余りとなしました。12月には様々な行事が催されますが、例年12月10日におこなわれるノーベル賞授賞式も、代表的なもののひとつといえるでしょう。1896年12月10日、スウェーデンの化学者であったアルフレッド・ノーベルが亡くなり、ノーベル賞は彼の遺言によって設立されています。
そのノーベル賞のなかで、今年の物理学賞受賞者のひとりが、米国プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎氏(1975年に米国籍取得)です。1931年9月21日、愛媛県宇摩郡新立村(現四国中央市新宮町)で、祖父の代から村で唯一の医院だった家に生まれています。気象予測をおこなうコンピューターモデルの先駆者とされ、地球温暖化の研究・予測の理論的基礎を確立したことにより、気象分野初となるノーベル賞(物理学)を受賞しました。特に、大気中の温室効果ガス増加に伴う気温上昇を数値予測することに初めて成功し、大気の流れと海洋大循環とを組み合わせた大気海洋大循環モデルを発表、地球温暖化現象における海洋の役割を明らかにしたことで知られています。28年前の1993年7月、真鍋氏が横浜で興味深い講演をおこないました。少し長くなりますが、日本気象学会機関紙『天気VOL.40〝IAMAP・IAHS〟93特集号』に記載された内容をご紹介します。
「炭酸ガスが増加すると、地球の平均温度の永年的上昇を通じて海洋大気の結合システムの大規模現象が影響を受け、気候が大きく変わるので、その効果は非常に重大である。例えば、海洋の熱塩循環(中深層で起こる地球規模の海洋循環)が大きく変わる可能性がある。氷期の終わり頃、温度上昇と氷床融解にともなって海洋循環が突然変わったらしいというBroeckerの議論(1987年)も、その可能性を示唆する。ここでは、海洋大気結合気候モデルを用いて、炭酸ガス量の2倍ないし4倍増加による全球(地球全体)気候の数百年間の変動を計算した。結論的には、500年後の全球平均気温上昇は炭酸ガス2倍増の場合は3.5℃、4倍増の場合は7℃に達する。また、海水の熱膨張による海面水準の上昇はそれぞれ1mと1.8mに及ぶことがわかった。更に、炭酸ガス4倍増のときは海洋の温度構造や力学構造が著しく変わる。すなわち、海洋の熱塩循環はぱったり止み、温度躍層(ある深度を境に水温が急激に変化する層)が大きく下がるという、全く新しい安定な状態に落ち着いてしまう。このような変化は海洋深層との物質の交換を阻害するので、大気海洋結合系の炭素循環や生物地球科学過程に大きな影響を及ぼす可能性がある。」
現在、世界各地で気候変動への対応がなされ、世界銀行によれば、今年4月時点において世界全体で64のカーボンプライシング(炭素税と排出量取引制度)の取り組みが稼働しています。このうち炭素税は欧米や日本など27ヶ国・8地域で導入され、世界全体で排出される温室効果ガスの5.5%を、排出量取引制度は欧州連合(EU)、米国、中国、韓国など38ヶ国・29地域に及び、同じく16.1%をカバーしています。またEUは、いち早く野心的な目標を打ち出しました。昨年12月に欧州グリーンディールを発表し、2050年の気候中立(温暖化ガス排出実質ゼロ)を法定化した欧州気候法の制定、2030年の削減目標の引き上げ、気候目標を実現するための立法措置改正をすすめていくことを宣言しています。昨年、世界中が新型コロナウイルスによる未曽有の危機に直面するなかでも、EUは総額1.8兆ユーロの中期予算(2021~2027年)の3割を気候変動対策に充当することを打ち出すなど、グリーンリカバリーによる経済再建の旗印を鮮明にしています。
不動産から生み出される家賃を主たる売り上げとしている弊社にとりましても、気候変動は十分に注意を払わなければならない事象のひとつです。できることは限られておりますが、いつでも適切な対応ができるよう、心がけて参ります。