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連休も終わり、新年度がはじまって1ヶ月以上が経過しました。新卒で会社勤めをされている皆様も、少しは会社に慣れてきているころではないでしょうか。各企業では、成長ステージに応じ、ジョブローテーションや職場における組織的な人材育成への取り組みをおこなっています。管理職が担う最重要事項のひとつとして、人材育成を掲げている企業も少なくありません。組織全体での人材育成が必須となっています。
人的資本の情報開示に関するガイドラインやルールづくりの動きが広がっているところです。先行きの不確実性が高まるなか、企業価値創造の源泉として人材がより重視されはじめたことが背景にあります。経営者に求められるのは、明確な人材戦略をもつことであり、株主などのステークホルダーもそれを期待しているでしょう。
一昨年8月、米国の証券取引委員会(SEC)は非財務情報に関する規則を改正し、上場企業に人的資本の開示を義務づけました。人材の確保や育成策の開示を求めています。人的資本開示に関する法案も昨年6月に連邦議会下院を通過しました。雇用形態ごとの従業員数や人材の多様性、スキル・能力、生産性など8分野の開示を上場企業に義務づけています。国際標準化機構(ISO)は2018年、人的資本の開示指針としてISO30414という規格を公表しました。多様性、リーダーシップ、生産性など11領域からなり、米国の法案の内容はこれと重なる点が多くなっています。
日本でも昨年6月改訂のコーポレートガバナンス・コードに人的資本関連の情報開示を求める部分が追加されました。女性や外国人の管理職登用といった多様性の確保などについて示すべきだとしています。政府による開示指針づくりもはじまっていますが、市場関係者からは、定量・定性情報をいくら開示しても、羅列しただけでは意味がないという指摘もなされています。経済産業省の「人的資本経営の実現に向けた研究会」では、有識者から、人的資本がなぜそうした状況にあるのか、経営戦略と結びつけてストーリーで説明することがポイントとの意見もありました。ステークホルダーが知りたいのは、企業が人的資本をどのように価値創造につなげているか、というところです。
コーポレートガバナンス・コードも、人的資本投資の情報開示は、経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に、と注文をつけています。例えば、三井化学はISO30414の活用も視野に、人的資本の開示を充実させていく考えを示しました。既に統合報告書で、経営者候補をはじめとした事業の担い手育成や従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や主体的関与)向上の取り組みなどを説明しています。従業員のキャリア開発意識を高めるため、職務の見える化も推進中です。
米国SECが人的資本開示を義務づけた背景には、テクノロジーの進化によって技能や所得で格差が拡大し、企業が適切に教育投資やポストの用意をしているのか、注視する必要があったことも一因だったとか。格差是正の視点も企業に求められておりますが、一方で、情報開示要求の高まりはチャンスにもなります。弊社でもそうできるよう、適切な対応を心がけて参ります。