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昨日は体育の日。東京オリンピック開幕まで既に300日を切っておりますが、日本ではいまだに人口の東京流入が続く一方、地方の人口減少は顕著です。約1800ある市区町村のうち半分程度が、このままの状態が続くと、2040年までに20~39歳の若年女性人口が半減する可能性があります。また、高齢化がすすむことで、首都圏が地方を支えることも難しくなってくるでしょう。
ところで近年、都市の住民が農山村に移住する田園回帰への関心が高まっており、都市と農山村が共生する社会の構築につながるものとして期待されています。2015年5月に公表された「食料・農業・農村白書」の特集は田園回帰でした。この白書は閣議決定を経たものですから、田園回帰という言葉を政府が正式に認めたことになり、また、2014年6月の世論調査の結果は、そうした傾向を裏づけています。特に20歳代男性では47%が、将来は農山漁村に移住したい、と答えており、全体的にみても農山漁村への移住願望が高くなっていることが確認できます。そしてそれ以上に注目すべきは、30歳代女性の過半が、農山漁村で子どもを育てたい、と答えている点です。これこそが田園回帰を後押ししている大きな要因ではないでしょうか。
とはいえ、当然ながら、移住は容易なことではなく、そこにはいくつもの困難が待ち受けています。例えば、コミュニティ、住宅、仕事の3つです。ムラ社会はいつまでも閉鎖的だ、空き家など絶対に流動化するはずがない、仕事がないから人など来ない、とよくいわれています。しかし、これらのハードルも変化しつつあります。若者たちのなかには、農山村の濃密なコミュニティを、鬱陶しいムラ社会ではなく、温かいものと認識する人も増えてきました。住宅については、住民主導で空き家対策に取り組み、流動化を実現する動きも散見されます。そして仕事では、ひとつのフルタイムの仕事で暮らすという選択だけが地域での生き方とはみなされず、多業化で仕事を確保するといった新しい可能性もみえてきました。
来年の東京オリンピック・パラリンピックを契機として東京を中心とする成長追求型都市社会を目指すのか、そうではなく、脱成長型の都市・農山村共生社会を創造していくのか、日本は大きな岐路に差しかかっているのかもしれません。そうした状況下、農山村に移住して地域づくりにかかわり、都市と農山村の共生にむかって行動する若者を中心にした人々のムーブメントが田園回帰です。田園回帰は地域再生の問題にとどまらず、都市と農山村の共生も含んでいます。都市も農山村も成長を、ではなく、互いが支え合う持続的な社会の創造のための象徴的な動きといえるでしょう。
人口減少下でも地域にみがきをかけ、外部の人々を呼び込むだけではなく、地域のなかの人々もそこに残ると決断していくことも含め、選択される地域をつくっていかなければなりません。たとえ人口は少なくても、次の世代に支持されるような地域の人々の前向きの営みが田園回帰を後押ししていきます。働き盛りの世代が輝く場、高齢化世代が安心できる場、子どもたちが戻ってくる場、地域の外にとってあこがれの場などが必要です。弊社も事業を営むなかで、そういった場の提供に少しでもお役に立てるよう、努めて参ります。