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昨年12月、スイスに本部を置く国際機関である世界経済フォーラムは、2020年版世界ジェンダーギャップ報告書を公表しました。今回は世界153ヶ国を対象に、教育・健康・経済・政治の4分野でジェンダーギャップ(男女の格差)を指数化し、ランキングしています。日本の総合順位は121位で、前回の110位から順位を下げました。しかも先進7ヶ国(フランス、米国、英国、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)では最下位となり、男女格差が最大です。分野別でみると、健康が40位、教育が91位で、総合順位との対比では男女格差は比較的小さくなりました。しかし、経済と政治での男女格差は依然として開きがあり、経済115位、政治144位です。日本では女性役員・管理職はまだそれほど多いわけではなく、所得も男性の半分程度という点からみても、職場における待遇の違いは明らかでしょう。女性議員(衆議院)の割合も1割程度にすぎず、世界最低レベルとなっており、また、過去半世紀の間に女性の国家元首がいた国は70ヶ国弱になりますが、日本ではまだ女性の首相は出ていません。女性の社会進出に向けた環境づくりが急がれています。
昨年6月、女性活躍推進法等の一部を改正する法律が公布されました。一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大し、2022年4年に施行される予定です。また、現在、一般事業主行動計画の策定・届出をおこなった企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良であるなど一定の要件を満たした場合、えるぼし認定(1~3段階あり)がなされますが、その認定企業のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が特に優良であるなど一定の要件を満たせば、今年6月以降になりますが、プラチナえるぼし認定を受けることができます。えるぼしとは、認定された企業が広報などのために使えるアルファベットのLをかたどった認定マークの名称です。えるぼしのえるはLaborやLadyの頭文字に由来し、プラチナえるぼしであれば★が5つ、それ以外は段階に応じて1~3つ付されています。
ここで、えるぼし認定を既に受けている勇心酒造株式会社について、少しご紹介します。香川県綾川町にある1854年(安政元年)創業の酒造会社で、当初は日本酒の造り酒屋でした。1974年に現社長が米の総合利用研究を開始したことを皮切りに、米の発酵エキスの開発に力を入れ、現在では日本酒造りだけでなく、米の発酵を生かした化粧品素材の開発・販売を中心に事業を展開しています。まずは入浴剤の開発を中心に研究をすすめていましたが、日本酒の売り上げだけでは新規事業の研究を継続させることが苦しくなり、そのような状況のなか、ある女性従業員から、「エキスの浸透力が高く、従来のものとは一線を画す化粧品が開発できる」という一言により、化粧品への活用をはじめました。その結果、当時、米の発酵エキスの化粧品への使用は他に例がなかったこともあって、売り上げの拡大に成功しています。同社は男女の割合がほぼ同じですが、日本酒造りが事業の中心であった頃は男性社員が大半を占めていました。事業の中心が化粧品に移るに伴い、化粧品の開発にあたって実際の使い心地が大切であり、女性従業員の意見が重要であったこと、優秀であれば男女問わずに積極的に採用をおこなってきたこと、育児休業を利用して働き続ける従業員も増え、離職者も少ないことなどが相まって、結果として現在の均衡がとれた状況になっています。同社の働き方や取り組みは各所で評価をされており、一昨年5月には、えるぼしの最高段階に認定されました。香川県内での認定は3社目、最高段階への認定は2社目です。同社では、日本酒造りから化粧品づくりへと事業の中心が変わったこともあり,男女問わず多くの若い世代も活躍しています。
さて、これからの企業は、もう財務情報のみで判断されないことは明らかであり、女性従業員の活躍といった非財務情報の公開も、企業価値判断にとって重要であることは間違いありません。いかに長期的に成長し、社会に貢献するサステイナブルな経営なのか、環境にどこまで配慮しているのか、従業員や地域社会を大切にしているのか、ガバナンスはしっかりしているのかなど、企業を全方位から点検し、企業姿勢を具体的に発信していかなければならない時代となっています。弊社もこれらを十分に考慮したうえで、事業の成長・発展に努めて参ります。