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地球温暖化や人権問題、更には新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行などにより、環境や社会の課題に対する関心は世界的に高まっています。これに伴い、投資の世界においてもESGへの関心は高まるばかりです。こうしたなか、国内の主要な投資主体である個人は、ESG投資をどう捉えているでしょうか。野村證券が昨年12月に実施したアンケート調査(インターネット)をご紹介します。
この調査は、約2万4000人の株式投資経験者のなかから無作為に3000人を抽出してアンケートを送信しました。有効回答数が1000に達した時点で締め切り、集計しています。新型コロナウイルス感染拡大によってESG投資に対する認識に変化がありましたか、という質問に対しては30.3%の回答者がESG投資を重視するようになった(非常に重視するようになった、ある程度重視するようになった、の合計)と答えている一方、重視しないようになった(あまり重視しなくなった、ほとんど重視しなくなった、の合計)は6.4%にとどまりました。特に変化はなかった、が63.3%で最多となったものの、コロナ禍という前例のない状況から、回答者のうち約3割が投資に対する常識や考え方を変える必要性を認識し、ESG投資への意識を高めたのでしょう。
これを回答者の投資方針別にみると、興味深い傾向がみられます。概ね長期保有だがある程度値上がり益があれば売却する、との方針をもつ回答者(475人)で39.2%、値上がり益を重視して短期間に売却する、との方針の回答者(90人)では33.3%が、ESG投資を重視するようになった、と答え、全体平均(30.3%)を上回りました。長期志向の個人はコロナ禍によって環境や社会の課題が長期的にも投資に与える影響が拡大したと認識し、また、短期志向の個人にとっても、コロナ禍により、ESG要因が相場変動の材料になるとの認識が高まったと考えることができるでしょう。一方で、配当や株主優待を重視する、との方針を持つ回答者(321人)では23.4%と、全体平均よりも低くなっています。配当や株主優待を重視する個人は、財務内容が良好など企業に内在する価値に注目して投資していると考えられ、ESG投資に対する関心はそれほど高くないようです。更に、投資方針を特に決めていない、という回答者(114人)では10.5%にすぎません。そもそも投資方針をもっていないことから、ESG投資への関心も薄いのでしょう。
日本の家計資産の動向をみると、現預金の比率が伝統的に高く、貯蓄から資産形成へ、は長年の課題であるといえます。こうした状況下、家計にはESGの各課題への関心を高めてもらうとともに、資産形成への関心も高めてもらわなければなりません。ESGについては、地球温暖化やコロナ禍をきっかけとした環境や社会の課題への高まりは日本でもみられてきています。今回紹介したアンケート調査でも、個人がESG投資の重要性に対する認識を高めていることが伺い知れます。今後も、個人への訴求や更なるESGの認知度向上が課題であるといえるでしょう。また、資産形成についても、コロナ禍も手伝い、インターネット経由で新規の証券口座を開設する個人が増えているようです。ただ、例えば株価がある程度上昇すると、保有株式は売却され、投資への関心が薄れてしまう傾向も否定できません。
課題はなお残るものの、個人がESG投資への関心を高めてきたこの機会を捉え、長年の課題である長期的な資産形成をいかに意識してもらうのか、一層の努力や工夫が求められています。弊社は不動産を通して、その実現の一端を担って参ります。